自治体関係者の方は、最近「書かない窓口」という言葉を聞くようになったのではないでしょうか?
なんとなく想像は付くかもしれませんが、「具体的に何をしたらいいのか分からない」「唐突過ぎてどんな裏があるのかと思ってしまう」という方も多いでしょう。
今回は「書かない窓口」について、難しい専門用語を使わずに分かりやすく解説していきます。大がかりな変革ではないスモールスタートのアイデアも紹介しているため、ぜひ参考にして下さい。
書かない窓口とは?
デジタル庁が進める「書かない窓口」とは、デジタル技術と業務改革を掛け合わせることで、「書かせない・待たせない・たらい回しにしない」窓口を実現し、住民サービスの向上と職員の業務負荷軽減を両立させる施策です。
マイナンバーカードや自治体がすでに保有しているデータを最大限に活用することで、単なる一律的なデジタル化ではなく、デジタルに不慣れな住民も含めた「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を目指しています。
「書かない窓口」が目指す姿
「書かない窓口」が目指す究極の姿は、デジタル技術を駆使して住民の負担と職員の負担を同時に解消し、「行かない窓口」と「行っても快適な窓口」を両立させた、すべての人に優しい行政サービスです。
「行政のデジタル化3原則」を元に、住民には利便性やストレスの低減を、職員にはコア業務に集中できるゆとりを提供します。
【行政のデジタル化3原則】
- デジタルファースト: 手続きやサービスを紙ではなく、一貫してデジタル上で完結させる原則です。
- ワンスオンリー: 一度提出した情報は、二度目の提出を不要とする原則です。マイナンバー等の情報連携により、自治体や省庁間でのデータ共有を実現します。
- コネクテッド・ワンストップ: 民間サービスを含め、複数の行政手続きや関連サービスを1回(1箇所)の申請でまとめて完了させる原則です。
書かない窓口の具体的な事例
「3原則」や「すべての人に優しい」と言われても、いまいちピンとこないかもしれません。
ここからは実際の事例を元に、具体的な「書かない窓口」についてより理解を深めていただきたいと思います。
東久留米市:単純な申請はデジタルで
東久留米市の市民課では、情報の入力だけで済む「証明書の申請」と、複雑な確認事項が多い「引っ越し・世帯変更手続き」の窓口を分けました。
これにより、本当に人の力が必要な手続きにのみ人員を割くことができ、住民一人ひとりの話をじっくり聞く余裕ができます。また、証明書取得のためだけに来庁した住民も、長時間待つ必要がなくなりました。
美濃加茂市:身分証明書の情報を自動転記
美濃加茂市の市民課および国保年金課の一部では、身分証明書を専用端末で読み取ることで、各種書類申請書に必要事項を自動転記する仕組みを導入しています。
最終的には職員の目で誤りがないか確認が入り、スピードと正確性のバランスを取った仕組みになりました。
書かない窓口が推進される背景
ではなぜ今、急に「書かない窓口」が推進されるようになったのでしょうか。理由や背景を多角的に解説していきます。
業務の複雑化や負担増加
前提として、行政手続きは時代とともに変化・複雑化し、それに伴って職員の負担も増加しています。
住民が複数の紙に記入した内容を、職員が一つずつ手作業で基幹システムに入力したり、別の書類と突合(とつごう)したりするミスが許されない業務が、職員にとって精神的にも大きな負担となっているのです。
申請書ごとに記入方法や添付書類が異なるため、窓口職員は「ここに氏名を書いてください」「これにはこの証明書が必要です」といった、個別具体的な説明に多くの時間を割かれています。
民間とのデジタル化レベルのギャップ
行政手続きに対する意識や利便性への期待も、ここ20年で大きく変化しました。
民間企業や家庭ではデジタル化が浸透したことで、役所に来た際の「何度も同じ住所や氏名を書かされる」という体験に対して、住民は以前よりも強いストレスや不満を感じるようになっています。
特に事例の少ない手続きでは複数の課を物理的にたらいまわしにされることも多く、平日の日中に貴重な有給休暇を消化してすら「結局何もできずに終わった」となれば、移動による疲れも相まって、住民の怒りも計り知れません。
「2040年問題」による圧倒的な労働力不足
日本の生産年齢人口の減少が深刻で、2040年には6,000万人未満にまで減少すると推計されています。特に地方の中小規模自治体では、採用難や退職者の増加により、必要な人員を確保することが年々難しくなっているのが現実です。
これは総務省の有識者会議などでも広く議論され、「2040年問題」と呼ばれています。
従来の「住民が紙に書き、職員が目視でチェックし、手入力する」という労働集約型の業務スタイルのままでは、職員数が減った段階で窓口業務が完全にパンクしてしまうでしょう。
高品質な行政サービスを維持し続けるためには、職員が少なくなることを前提とした業務モデルへの転換が不可欠なのです。
書かない窓口には裏がある?癒着では?
急に推進してきたり、特定のベンダーを指定している時点で「何か裏があるのでは?」と思ってしまう方もいるのではないでしょうか。
しかし、先述したような背景はかねてより問題視されていましたし、いつかは解決しなければならない課題であることは明白でしょう。手遅れになる前に、スマートフォンやデジタル機器に国民が慣れ始めたいま、推進しやすくなったという見方もできます。
強いて言えば、予算を投じて制作したマイナンバーカードで「便利になった」と実感してもらう実績がほしい、という点も挙げられるかもしれません。
ベンダーの選定もむしろ「高額コンサルに地方自治体予算を投じてしまった」という事例からの反省により、厳しい審査を経たベンダーのみを提示しています。
参考:https://www.digital.go.jp/news/65890e75-aa43-4337-a3fc-4e00830fd226
書かない窓口推進における地方自治体への支援
地方自治体は特にデジタル人材やノウハウが不足していることが多く、「書かない窓口」のメリットを理解していても導入ハードルが高く感じられます。
そこでデジタル庁は、システムを配るだけでなく、ノウハウと環境の両面から、自治体が自走できるよう手厚い支援パッケージを用意しています。
自治体窓口DXSaaS
自治体窓口DXSaaSは、デジタル庁が厳選した「複数の優良なシステム(事業者)」の中から、自庁の規模や予算、目的や課題に合わせて好きなシステムを選ぶという仕組みです。
全国の自治体には、人口100万人を超える大都市から、数千人の町村まであります。抱えている課題や、すでに裏側で使っている基幹システム(住民基本台帳など)のメーカーもバラバラです。
そのため、デジタル庁は「1つのシステムを全員で使いなさい」とするのではなく、国が「セキュリティや機能の基準を満たしている」とみなした事業者をラインナップし、選べるようにしました。
自治体窓口DXSaaS事業者
2026年度の提供事業者は以下の通りです。
- 株式会社オーイーシー
- 株式会社北見コンピューター・ビジネス
- 株式会社ケイズ
- 株式会社コミクリ
- 株式会社TKC
- 日本電気株式会社
- 株式会社BSNアイネット
- 富士フイルムシステムサービス株式会社
- 株式会社両備システムズ
窓口BPRアドバイザーの派遣
「窓口BPR」とは、主に自治体の窓口業務において、現状の業務プロセスや待合室の配置を根本から見直し、再構築する業務改革(Business Process Re-engineering)のことです。
デジタルツールの導入前に業務手順や窓口のつくりそのものを最適化することで、住民の待ち時間短縮や職員の負担軽減を目指します。
先ほどご紹介した東久留米市の「手続きの簡易さで窓口を分ける」という解決策が良い例です。
デジタル庁は、この難易度の高い窓口BPRをサポートするために「窓口BPRアドバイザー」を無償で派遣しています。
参照:https://www.digital.go.jp/policies/cs-dx/localgovernment-adviser
窓口BPRでは、主に以下の3つのステップで業務を徹底的に見直します。
① 業務の棚卸しと可視化
まずは、住民が来庁してから手続きが終わるまでのプロセスをすべて書き出します。
「市民課でこれを受け取って、税務課に内線して、紙の決裁を回して……」という職員の動きを具体的に洗い出しましょう。
② 「やめる」「減らす」「変える」の判断
書き出した業務の中から、「やめる・減らす・変える」に仕訳します。
- やめる: 「前例踏襲でなんとなく続けている二重チェック」や「意味のない内規」の廃止。
- 減らす: 複数の課でバラバラに求めている、同じ添付書類(住民票など)の共通化。
- 変える: 「紙での決裁」を「電子決裁」に変える、「課ごとに分かれている窓口」を「1つの総合窓口」に統合する。
③ 業務フローにデジタルを組み込む
惰性で続いて複雑化した業務フローを整理して初めて、デジタルを組み込みます。
「窓口で読み取ったデータが、そのまま裏側のシステムに自動で取り込まれるには、どういう手順にすればいいか」など、技術的な課題も派遣アドバイザーに助言を仰いでみてください。
書かない窓口の注意点・デメリット
「書かない窓口」は住民・職員の双方に多大なメリットをもたらす取り組みですが、実際に現場で導入を進めるにあたっては、無視できない注意点やデメリットがいくつか存在します。
これらをあらかじめ把握しておくことで、導入後の「こんなはずじゃなかった…」という現場の混乱を防ぐことができます。
「デジタル弱者」への二重対応
すべての人にデジタルを強制することはできません。マイナンバーカードを持っていない人、スマホやタブレットの操作がどうしても難しい方なども必ず来庁します。
その時、「システムを使う」「従来通りの紙に手書きしてもらう」などフローを複数作ってしまうと、導入時はラクですが、後々混乱やミスを多発しかねません。
「裏側の課とどうデータをやり取りするか」「デジタルが使えない人にどう対応するか」という業務フローを事前に想定しておきましょう。
職員の教育コスト
長年慣れ親しんだ「紙と目視」の運用を変えることは、現場の職員にとって精神的にも大きな負担です。
導入直後は操作に戸惑う職員が増え、一時的に窓口の待ち時間が以前より長くなってしまい、住民からクレームを受けるリスクがあります。
しかしどこかでアップデートしないと、現在以上に家庭や民間とのデジタル格差は拡大し、住民の不満は募り続けます。「変革に痛みは伴うもの」という割り切りも必要です。
書かない窓口をスモールスタートする方法
大がかりな予算や基幹システムの改修となると、腰が重くて後回しになりがちですよね。
ここからは、身近で手軽なITツールを用いた、1日で完了する「書かない窓口の第一歩」を挙げていきます。
整理券システムを導入する
すぐにできる「書かない窓口」の手法として、アプリタイプの整理券システムを導入する方法が挙げられます。システムを入れたタブレット端末を入口に設置するだけなので、一般的なPCスキルがあればすぐに導入可能です。
役所の入り口に「整理券システム」を設置することで、赤ちゃん連れの住民や、視力や動きにハンデがある住民が、受付簿で苦労せずに済みます。「あとどれくらい待つか」が可視化されるため、来庁者のイライラ防止にも。
整理券システムの種類
整理券システムは主に「現地で受付するタイプ」と「リモート(自宅や外出先など)で受付するタイプ」があります。
さらに、前者には「紙で発券するタイプ」と「ペーパーレスタイプ」があり、後者の方が印刷紙の取り換え・購入の手間もなく、住民は外出先からもリアルタイムで待ち人数が見えるため、利便性が高いです。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 現地受付(紙で発券) | ・紙の紛失や汚損の恐れがトラブルに ・印刷紙の取替・購入が手間に |
| 現地受付(ペーパーレス) | ・外出先からも待ち人数が確認できる |
| リモート受付 | ・現地に行かなくても受付ができる ・外出先からも待ち人数が確認できる |
整理券システムの料金
整理券システムの利用料金の相場は、月額5000~1万円程度。さらに専用端末の購入が必須なものは、初期費用がかかるものもあります。
「ビヨンド整理券」はアプリタイプなので一般的なタブレット端末で利用でき、初期費用なし・月額3000円で導入可能です。
完全ペーパーレスタイプで、「現地受付」「リモート受付」の両方に対応しています。
1ヵ月無料でお試しいただけます。まずは資料請求から、お気軽にお問い合わせください。
(※自治体向けの説明会を行うことも可能です。お気軽にご要望をお伝えください。)
\営業連絡は一切ナシ!/
LINE公式アカウントの活用
住民に広く普及している「LINE」を活用して、書かない窓口を運用する方法もあります。
たとえば、住民が来庁する前にLINEのチャットボットで必要事項を記入させ、回答結果に応じて必要な持ち物(パスポートやマイナンバーカードなど)や行くべき窓口を表示します。
LINE公式アカウントの料金
LINE公式アカウントの料金は以下の通りです(2026年7月現在)。
外部システムと連携する場合、別途費用がかかる場合があります。
- コミュニケーションプラン(無料): 月に200通まで送信可能
- ライトプラン(月額5,500円): 月に5,000通まで送信可能
- スタンダードプラン(月額33,000円): 月に30,000通まで送信可能
参考:https://www.lycbiz.com/jp/service/line-official-account/plan/
まとめ
書かない窓口は国が推進する、役所・住民・財政と三方よしの施策です。人手不足が加速していく現代だからこそ、質問対応やクレーム対応を未然に防ぎ、スムーズな財政手続きを心がけましょう。
先ほど紹介したビヨンド整理券は、1ヵ月無料でお試しいただくことができます。職員や議員の方への説明や、プロポーザルへの参加も可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
\営業連絡は一切ナシ!/


