病院・クリニックのカスハラ対策マニュアル!根本原因にアプローチする環境づくりも解説

病院でカスハラする男性患者 受付効率化

近年、医療機関における患者様やそのご家族からのカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会的な課題となっています。暴言や威圧的な態度、理不尽な要求などは、対応するスタッフの精神的な負担となり、離職につながることも少なくありません。

また、しばしば法律に抵触する行為も病院・クリニックでは多く見かけます

この記事では、病院で発生しやすいカスハラの具体例、現場を守るための初期対応の流れ、組織的な防衛策、そしてハラスメントの引き金になりやすい「待ち時間のストレス」を緩和する具体的なアプローチについて解説します。

【厚生労働省データ】カスタマーハラスメント(カスハラ)の実情

厚生労働省の実態調査をまとめた「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」のデータによると、多くの企業や法人がカスハラの被害に直面しており、現場に深刻な影響を与えていることが分かっています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000899376.pdf

過去3年間でカスハラを経験した法人の割合

調査によると、過去3年間に「顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の相談があった」と回答した企業・法人は約20.1%にのぼります。

カスハラという言葉が浸透していない時期の調査にも関わらず5社に1社の割合でカスハラのリスクが顕在化しており、決して一部の特殊な事例ではないことが示されています。

現場のスタッフに与える影響

カスハラが従業員に与える悪影響

カスハラが発生したことによる、働くスタッフへの影響(複数回答)として、主に以下のデータが報告されています。

  • 精神的な不調(眠れない、憂鬱になる等)を訴える人が増えた: 51.5%
  • 職場に対する「怒り・不満・不信感」が高まった: 45.4%
  • 業務に対するやる気が低下した: 36.7%
  • 離職・退職に至る人が出た: 10.6%

このように、被害に遭ったスタッフの半数以上が何らかの精神的不調を訴えており、約1割のケースでは実際に「離職」に繋がっているという事実があります。医療機関においても、こうしたスタッフの心身へのダメージは看過できない問題です。

カスタマーハラスメント(カスハラ)の定義と具体例

厚生労働省のガイドラインなどでも示されている通り、カスハラとは「顧客等からの要求の内容に妥当性がないもの、または妥当性があってもそれを実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」を指します。

病院においては、以下のような行為が該当し、法律に抵触する可能性があります。

参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

暴力

胸ぐらをつかむ、殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げつける(体に当たらなくても、近くに投げつけて威嚇する行為も含みます)といった暴力的な行為です。

相手に怪我をさせていなくても、不法な物理力を行使した時点で暴行罪(刑法208条)が成立します。

セクハラ(性的嫌がらせ)

言葉による執拗なセクハラ(卑猥な言葉をかけるなど)、待ち伏せ、つきまとい、スマートフォンなどによる盗撮、お尻などを触る、抱きつく、キスを強要するといった性的な嫌がらせ行為です。

迷惑行為防止条例違反にあたり、同意のない身体的接触は不同意わいせつ罪(刑法176条;旧・強制わいせつ罪)という非常に重い罪に問われます。

威圧的な言動・行動

受付で大声を出す、スタッフ個人に対して「バカ」「無能」などと非難する、性的な発言を繰り返す、机を叩くなどの威嚇行為です。

これらは威力業務妨害罪(刑法234条)や侮辱罪(刑法231条)に抵触する可能性があります。

実現不可能な要求・執拗な抗議

医療行為の順番を意図的に早めるよう要求する、制度上認められていない返金を求める、土下座を要求する、説明が終わっているにもかかわらず何時間も受付に居座るといった行為です。

これらは不退去罪(刑法130条後段)や強要罪(刑法223条)に当たる可能性があります。

信頼関係を損なう脅迫

「ネットに悪評を書き込んでやる」「保健所に通報する」などと執拗に口に執る行為です。実際に書き込まなくとも、「晒すぞ」といった発言も脅迫に当たります。

これらは脅迫罪(刑法222条)や脅迫罪(刑法222条)に抵触する可能性が高いです。

また、実際にSNSに「この看護師無能だわ」などと書き込んだ場合、本人が特定できる情報(顔写真や名札など)があれば名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)、さらにその投稿によって営業に支障をきたした場合は業務妨害罪(刑法233条・234条)が成立します。

たとえ病院側が対処をしなくても、晒された従業員が肖像権の侵害 / プライバシーの侵害などで損害賠償を請求することもできます。

医療機関だからこそ深刻化しやすい、病院特有のカスハラ問題

病院やクリニックにおけるカスタマーハラスメントは、一般的なサービス業とは異なる特有の背景があり、問題が表面化しにくく、深刻化しやすい傾向があります。主に以下の3つの要因が、現場の対策を難しくしています。

組織として許す空気になりやすい

医療従事者や受付スタッフは、「患者様は病気や怪我で不安を抱えている」「体調が悪くて心の余裕がないのだろう」と、相手の状況を思いやる傾向が強くあります。

そのため、多少の暴言や理不尽な要求をされても、「自分が我慢すればいい」「医療従事者なのだからこれくらいは受け止めるべきだ」と内々に処理してしまいがちです。

院内全体としても「患者様を無下にできない」という空気が生まれやすく、結果としてハラスメント行為が容認されたり、対応が長期化したりする原因となっています。

後から訴えることはできる?

特にセクハラ被害に遭った直後はフリーズしてしまったり、「大ごとにするのは施設に迷惑」「笑って流すのが良い看護師」という間違った風潮があります。

しかし、数日後であっても、笑って見過ごした場合でも、損害賠償を請求することは十分に可能です。「これくらいで警察に相談してもいいの?」「これは警察?弁護士?」と迷った場合は警察相談ダイヤルの#9110に電話をかけてみても良いでしょう。

病院側がスタッフを守らない場合は?

病院には、労働契約法第5条に基づき、スタッフが安全に働けるように配慮する「安全配慮義務」があります。悪質なカスハラを知りながら放置することで、病院側が安全配慮義務を怠っている=違法状態であるとみなされる可能性が高いです。

スタッフが精神的に病んでしまったり、退職を余儀なくされたりした場合、病院側がハラスメントを放置したことに対する慰謝料や、得られるはずだった給与(逸失利益)など、数百万円規模の損害賠償を国やスタッフから請求される判例が近年増えています

「おおごとにしない」という対応が、どれほど病院の首を絞める悪手であるかを知っておく必要があるでしょう。

参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13.pdf

毅然とした対応がしづらい

医師には、正当な事由がなければ診療を拒んではならないという「応召義務」医師法第19条第1項で定められています。

この義務があるために、現場や経営陣は「いくら態度が悪くても、受診を拒否したら法律違反になるのではないか」という不安を抱きやすく、毅然とした態度を取りにくいというジレンマがあります。

厚生労働省のガイドラインや通知等でも、執拗な暴言や暴力、不当な要求を繰り返すハラスメント行為は「正当な事由」にあたり、診療を拒絶しても差し支えないと明記されていますが、現場の心理的なハードルになっているのは事実です。

参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf

慢性的な人手不足が加速する

少子化社会の現代では、多くの医療機関が医療事務や看護師の採用難や人手不足に直面しています。

こうした限られた人員の現場において、特定の患者様からの執拗なカスハラ対応に時間が割かれると、全体の業務バランスが崩れてしまいます

さらに、ハラスメントの直接的な矛先になりやすい受付スタッフなどが精神的に疲弊し、「これ以上は耐えられない」と離職に繋がってしまうケースは少なくありません。一人の離職がさらなる人手不足を呼び、残されたスタッフの負担が増えるという悪循環は、経営上の極めて大きなリスクとなります。

現場のスタッフを守る初期対応の基本ルール

万が一、受付や診察室でカスハラと思われる行為が発生した場合、二次被害を防ぐための基本的な応対ルールを共有しておくことが大切です。

傾聴しつつも、過剰な謝罪は避ける

まずは患者様の話を聴き、不快な思いをさせた点については丁寧にお詫びをします(混乱させている、お待たせしている事実など)。

ただし、病院側に過失がない事柄や、不当な要求に対してその場で「分かりました」と同意してはいけません。

また、「もし~だったら」という仮定の質問や「そういえば~らしいな」といった無関係の質問は明確な回答を控えましょう

組織として複数人で対応する

対応が長引く場合や、相手の興奮が収まらない場合は、受付スタッフ一人だけに任せないようにしましょう。速やかに事務長や総務責任者などの管理職を交え、複数人で対応に当たります。

また、専門用語や若者言葉が入ると「バカにされている」と感じる可能性が高いため、言葉選びにも十分注意しましょう。この辺りは、日ごろから注意することで訓練できます。

別室への誘導し記録を残す

他の患者様の迷惑にならないよう、応接室などの別室へ誘導を試みます。

また、正確な事実確認のため、防犯カメラの映像や、必要に応じて応対内容を録音・メモとして記録に残す旨を相手に伝え、記録を開始します。これは今後法的措置を取ることになった場合に証拠として提出するためです。

組織として取り組むべきカスハラ防衛策

ハラスメントに対しては、病院全体が一体となって「毅然とした態度をとる」姿勢を示すことが、スタッフの安心感に繋がります。

警察や顧問弁護士との連携

暴行、器物損壊、不退去(退去を求めても応じない)などの行為が見られる場合は、速やかに警察に通報できる体制を整えておきます。また、悪質な事例については顧問弁護士と相談の上、法的措置を検討する窓口を明確にしておきます。

この記事の最初のパートで紹介したように「何がどの法律に抵触するか」を周知させるだけでも、万が一の動きがスムーズかつ正確になります。

院内方針の明示(ポスター等の掲示)

「当院では、スタッフへのハラスメント行為に対し、適切な処置をとらせていただきます」といった基本方針を記したポスターを待合室や受付に掲示します。

これにより、理不尽な言動を牽制する効果が期待できます。

【印刷するだけ】カスハラ対策ポスターをご用意しました

0からカスハラ対策ポスターを制作するのは、忙しい医療現場では難しいですよね。ビヨンド整理券コラム編集部で、汎用的なカスハラ対策ポスターをご用意しました。著作権フリーですので、ご自由に保存・印刷してご利用ください。

マニュアルの作成と管理も

増加するカスタマーハラスメントから職員の身を守るため、本記事で紹介したような具体的な対応基準を定めた「院内マニュアル」の作成・周知は今や医療機関にとって急務です。

しかし、このマニュアルは組織の防衛策そのものであるため、万が一外部へ流出すると、悪質なクレーマーに対策の抜け道を学習され、さらなる被害を招く重大なリスクを孕んでいます。

そこで最適なのが、高度な暗号化技術を用いたDRM(デジタル著作権管理)機能でコンテンツの無断利用や不正共有を強力に防止する『超配信』です。

職員がスマートフォンなどでいつでも対応手順を確認できる高い利便性を保ちながら、院外への情報漏洩リスクを最小化し、リスクマネジメントを強力に支えます。

カスハラが起こりづらい仕組みづくり

発生したカスハラへの対処法を整えることと同時に重要なのが、「患者様がイライラを募らせる原因そのものを減らす」という予防のアプローチです。

医療現場におけるトラブルの多くは、「長い待ち時間」と「いつ呼ばれるか分からない不透明さ」が引き金となっています。体調が優れない中で見通しの立たないまま待たされるストレスが、些細なきっかけで大きな怒りへと変わってしまうケースは少なくありません。

診察時間を削ることは困難ですが、「待合室で待ち続けるストレス」を緩和することはシステムによって可能です。その選択肢のひとつとして、クラウド順番待ちシステム「ビヨンド整理券」の導入が挙げられます。

「ビヨンド整理券」による混雑緩和とストレスの軽減

ビヨンド整理券は、専用の大型発券機を必要とせず、手持ちのPCやタブレットを活用して導入できるペーパーレスの順番待ちシステムです。院内の待ち状況を可視化することで、患者様と受付スタッフ双方の負担を軽減します。

スマートフォンのカメラで映すだけの簡単アクセス

QRコードを読み取り画面に表示されたURLにアクセスすると、現在の待ち人数がリアルタイムで確認できる仕組みです。

専用アプリのインストールや会員登録は不要なため、幅広い世代の方がスムーズに利用できます。

院外での自由な待ち時間を可能に

現在の状況がスマホで常に確認できるようになるため、患者様は順番が近づくまで、ご自身の車内や近くの店舗、あるいは一度自宅に戻って過ごすことができるようになります。待合室の混雑自体が緩和されるため、院内を静かで落ち着いた環境に保ちやすくなります。

メールやLINEへの自動通知機能

受付完了後、メールアドレスの入力やLINE連携が可能です。

順番が近づくと施設側から「呼び出し」ができます。

受付への問い合わせ減少によるスタッフの負担軽減

患者様自身が状況を把握できるようになるため、受付で「あと何分ですか?」「まだ呼ばれませんか?」と確認される頻度が下がります。

これにより、スタッフが本来の業務や目の前の患者様の案内に専念できるようになるでしょう。

まとめ:仕組みによる環境改善がスタッフと患者様を守る

病院におけるカスハラ対策は、応対マニュアルの作成や毅然とした組織対応といった「防衛」の側面と、患者様のストレス要因を取り除く「環境改善」の側面の両方を整えることが大切です。

デジタル技術を活用して待ち時間を可視化し、待合室の外でも快適に待てる選択肢を提供することは、患者様の安心感を生み出し、結果として受付での不要なトラブルを防ぐことにつながります。

日々の混雑や、それに伴うスタッフの応対負担にお悩みの経営者・事務長様は、院内環境を穏やかに保つアプローチのひとつとして、ビヨンド整理券の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

月額利用料は3,000円、初期費用は0円で導入できます。

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